苦みと風味への工夫
東和薬品では有効成分の苦みをマスキングした苦くない製剤や、風味をつけた製剤など、患者さんがより飲みやすい製剤の開発に取り組んでいます。
風味の選定にもこだわり、小児用製剤では、お子さんが飲みやすいようバナナやストロベリーなどの風味をつける工夫をしています。
また、他剤との併用を考慮して、あえて風味をつけていない製剤もあります。
苦みをマスキングする方法
官能マスキング
甘みや風味のある添加剤を混合して味をマスクする方法

製品味覚研究室
味覚への追求として、東和薬品では「製品味覚研究室」を2022年に設立し、患者さんが服用しやすい製品づくりに活かせるような研究など様々な取り組みを行っています。
組み合わせ、量を検討しています。
原薬・製剤の味を評価しています。

官能マスキングによる苦みへのアプローチ ~製品味覚研究室の取り組み例~
代表例オセルタミビルDS3%「トーワ」
添加剤を調整し、有効成分の苦みを軽減
有効成分のオセルタミビルは苦みを有しています。普段くすりを飲まないお子さんにも、インフルエンザの治療に必要な5日間きちんと服用してもらえる味の設計が重要と考えました。
苦みをマスキングする方法はいくつかありますが、オセルタミビルの場合、物理マスキングでは、安定性や製剤均一性、水への分散性など製剤面の課題がありました。そこで、これらの課題の解決と苦みの軽減を両立できる製剤設計を目指し、官能マスキングによる苦みへのアプローチを行いました。
原薬と各種添加剤の最適な組み合わせを検討した結果、原薬の苦みの強さを低減できたことが味覚センサーにより確認されました。
OISSY株式会社のURL:https://oissy.jp
苦みを抑制する工夫
甘味剤や酸味剤は、それぞれの成分によって味の発現タイミングや持続時間が異なることが報告されています。(下図「味の発現タイミングイメージ」参照)
その点を考慮して、オセルタミビルDS3%「トーワ」では、甘味成分(スクラロース、粉末還元麦芽糖水アメ、精製ステビア抽出物)と酸味成分(クエン酸水和物、DL-リンゴ酸)を選択し
有効成分由来の苦みを抑えました。また、小児用製剤であることから服薬アドヒアランス向上を考慮して、バナナ風味の製剤としました。

服用感アンケート1)
対象及び方法
生物学的同等性試験の被験者を対象として、オセルタミビルDS3%「トーワ」の服用感に関するアンケート調査(有効回答数: n=64)を実施。
アンケートの調査項目は5項目とし、それぞれについてVisual Analogue Scale(VAS)を用いた方法と選択方式の回答の2通りとしました。VASでは、長さ100mmの直線を用い、例えば「飲みやすさ」の場合、線の左端を「飲みにくい(0)」、右端を「飲みやすい(100)」として、服用時に感じた印象がどのあたりに位置するかを、直線に交差する線として被験者が記入しました。この交点と直線の左端との距離をVASスコアとして測定し、その平均値および標準偏差を求めました。
結果




1)信岡史将ほか:医学と薬学.2025;82(10):409-428
物理マスキングによる苦みへのアプローチ
代表例アトルバスタチンOD錠「トーワ」
胃溶性コーティングを強化し、飲みやすい製剤を開発
発売後も製剤開発に取り組み、2019年11月に味の改良に成功
有効成分のアトルバスタチンは苦みを有するため、発売後も製剤改良に取り組みました。苦みを感じにくくするため、胃溶性コーティングを強化しています。また、発売当初はペパーミント風味を採用しておりましたが、ヨーグルト風味に変更し、甘みを感じるタイミングが異なる2種類の甘味剤を使用することで、服用直後から後半の苦みの軽減を期待した味の改良に成功しました。

- 苦みマスキングの向上
- 胃溶性コーティングを強化
- 風味の変更
- ペパーミント風味からヨーグルト風味に変更
- 甘味剤の工夫
- 甘みを感じるタイミングが異なる2種類の甘味剤
アセスルファムカリウムの追加とアスパルテームの増量
代表例クラリスロマイシンDS小児用10%「トーワ」
有効成分の苦みをマスキングし、小児が飲みやすい製剤を開発
有効成分のクラリスロマイシンは苦みを有するため、2層コーティングによるマスキング技術を採用しています。また、口腔内への残留とざらつきを防ぐため、苦みマスキング粒子の粒子径を100μm前後に設定しています。いちご風味の香料を使用、さらに複数の甘味剤を組み合わせ、小児が飲みやすい製剤としました。2)
2)杉浦健ほか:医学と薬学.2006;56(5):735-742
苦みマスキングのための新たな挑戦
苦みをマスキングするために原薬をコーティングしようと思っても、原薬の形がいびつだと、均一にコーティングすることが難しく、ムラができてしまいます。すると、口の中に入れてから飲み込むまでの間に苦みが溶け出してしまいます。そこで東和薬品では、より均一にコーティングのできる、丸みを帯びた原薬の研究を行っています。より均一にコーティングのできる原薬を開発することで、これまで以上に苦みを抑えた、飲みやすい製剤を作ることにつながっていきます。

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