ニトロソアミン類の管理戦略~東和アミンアプローチ~

2021年10月8日、2024年7月30日にそれぞれ厚生労働省からニトロソアミン類の自主点検に関する通知、自主点検期限延長に関する通知が発出されました。更に、2025年7月24日に今後のニトロソアミン類の混入リスクに係る対応についての基本的な考え方および混入が想定される又は確認されたニトロソアミン類に係る必要な対応が厚生労働省から示されました。
医薬品へのニトロソアミン類の混入リスクを回避するためには、より確実にリスクを評価する取り組みが重要です。東和薬品では、製剤中のニトロソアミン類の検出にとどまらず、ニトロソアミン類の生成原因に着目した、“東和アミンアプローチ”を2021年より始動しました。“東和アミンアプローチ”により低分子アミン類10種類の同時分析が可能となったことで、分析期間の短縮につながり、通知に記載の自主点検期日(2025年8月1日)までに承認済み品目について評価が完了しました。本取り組みに関する研究成果は下記の学術誌に掲載されています。今後も新規申請品について東和アミンアプローチを行い、ニトロソアミン類の混入リスクを低減します。

福田 昭平, 星山 雄大, 近藤 加奈子, 内川 治, Development of a Simultaneous Analytical Method for Amines Corresponding to 10 Typical Nitrosamines: ACS OMEGA, ASAP Articles
(https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsomega.4c06293)

原因アミン類10種類の同時分析法の開発

代表的なニトロソアミン類の生成原因となるアミンが原薬に残留するか否かを網羅的に分析するために、下記について検討を重ねることによって原因アミン類10種類の同時分析が可能となり分析スピードの高速化を実現しました。

●特異性の高い分析装置(LC-MS/MS)及び設定条件(多反応モニタリングモード)
●カラム選択及び2種類のカラムの組合せ
●移動相(ギ酸アンモニウム水溶液及びギ酸水溶液)、グラジエント条件(アセトニトリル/水)
●使用機器(ポリプロピレン製)

原因アミン類10種類を同時分析した時のクロマトグラム

「東和アミンアプローチ」を用いた取り組み

ニトロソアミン類は、アミン類と亜硝酸類が反応して生成されます。ニトロソ基(-NO)の供給源は広範囲に及びますが、原薬中にアミン類が存在しなければ、原薬由来のニトロソアミン類の生成、混入ルートを遮断することが可能となります。そこで東和薬品が取り扱う全ての原薬について、10種類のニトロソアミン類生成に関与する“原因アミン類の有無“の分析・調査を行います。また、原薬へのアプローチならびにその結果を、全製剤のリスク評価に活かすと共に、リスクに応じた段階的かつスピード感をもった取り組みを進めています。
*厚生労働省が指定したニトロソアミン9種類に、ヨーロッパ薬局方が規制したN-ニトロソジプロピルアミン(NDPA)を加えた計10種類

ニトロソアミン類の生成原因

原薬を用いて、対象の原因アミン類(厚生労働省が指定したニトロソアミン9種類の原因アミンに、ヨーロッパ薬局方が規制したNDPAの原因アミンを加えた計10種類)の残留有無を調査します。

原因アミン類 ニトロソアミン類
ジメチルアミン N-ニトロソジメチルアミン(NDMA)
ジエチルアミン N-ニトロソジエチルアミン(NDEA)
メチル-4-アミノ酪酸 N-ニトロソ-N-メチル-4-アミノ酪酸(NMBA)
N-メチルアニリン N-ニトロソメチルフェニルアミン (NMPA)
エチルイソプロピルアミン N-ニトロソイソプロピルエチルアミン (NIPEA)
原因アミン類 ニトロソアミン類
ジイソプロピルアミン N-ニトロソジイソプロピルアミン(NDIPA)
N-メチルピペラジン メチル二トロソピペラジン (MeNP)
ジブチルアミン N-ニトロソジブチルアミン(NDBA)
モルホリン N-ニトロソモルホリン(NMOR)
ジプロピルアミン N-ニトロソジプロピルアミン(NDPA)

製剤は、有効成分の他、様々な添加物から成ることから、微量成分の分析においては複数成分からなるピークの重複等により目的とする成分の検出が困難な場合もあります。東和アミンアプローチは、製剤中のニトロソアミン類の有無の分析に加えて、その原因となるアミン類を、夾雑物の影響が少ない原薬で評価する取り組みです。“製剤中のニトロソアミン類の評価”に“原薬中の原因アミン類の評価“を加えた二重の評価により、安心・安全な製剤を医療関係者や患者さんにお届けしていきたいと考えています。

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