「T-LEX®法」(薬剤性ヒト肝障害リスク予測法)

ジェネリック医薬品の信頼性向上の取り組みとして開発したT-LEX®(Toxicity of Liver EXamination)法を紹介します。
この評価方法は東和薬品が世界で初めて開発したものです(※)。
T-LEX法を題材に、T-LEX法の研究開発者である中嶋幹郎教授と、大学病院薬剤部長として医薬品の安全対策や薬物治療の最適化に取り組んでおられる石井伊都子教授に、ジェネリック医薬品の安全性・信頼性について、意見を交換していただきました。
「日経メディカル」2015年3月号掲載 

背景

ジェネリック医薬品は生物学的同等性試験によって有効性・安全性が先発医薬品と同等と保証され、承認を得ています。しかしながら、添加剤がジェネリック医薬品と先発医薬品で異なることなどで安全性に関して不安の声を伺うことがあります。安全性を評価する方法には製造販売後調査や臨床試験がありますが、販売開始時までに十分な規模の臨床試験を実施し評価することは困難です。
東和薬品では、これらの課題を解消するため、薬剤性の臓器障害で最も多い肝障害に着目し、T-LEX法を開発しました。T-LEX法では販売開始時までにジェネリック医薬品と先発医薬品の肝障害リスクの比較が可能です。

特徴

  • ヒト肝細胞キメラマウスとトキシコゲノミクスの手法を用いることにより、ヒトの肝障害リスク予測が可能です。
  • 製剤を投与するため、医薬品丸ごとの評価、様々な剤形での評価が可能です。
  • ヒト臨床試験に比べて比較的安価かつ短期間でリスク予測が可能です。

肝障害性評価法の比較1)

T-LEX法での活用方法
肝障害性評価法の比較1)

方法・結果 アトルバスタチン製剤の事例を紹介します。

T-LEX法をムービーで紹介します。
  1. 1.ヒト肝細胞キメラマウス(PXBマウス®:株式会社フェニックスバイオ)にアトルバスタチン錠10mg「トーワ」もしくは先発医薬品を投与します。
  2. 2.各製剤投与群とコントロール群(医薬品非投与)の遺伝子発現量を調べます。
    (遺伝子発現量は、キメラマウスのヒト肝臓を摘出し、肝TotalRNAからcRNAを調製し、DNAチップを用いて調べます。)
T-LEX法

  1. 3.各製剤投与群とコントロール群の遺伝子発現量の比を算出し、以下(1)、(2)を行います。
    1. (1) ヒト肝臓における遺伝子発現量の変動率を比較します。
    2. (2) ヒト肝障害関連のPathwayの相関係数(r)を求めます。
(1) 遺伝子発現量の変化率1)
(1) 遺伝子発現量の変化率1)
両製剤投与時の遺伝子発現変動に高い相関性が示されました。(r = 0.95)
(2) 肝障害関連のpathwayの相関係数1)
(2) 肝障害関連のpathwayの相関係数1)
両製剤投与により同程度の遺伝子発現量の変化を示しました。(r ≧ 0.75)

アトルバスタチン錠10mg「トーワ」と先発医薬品は、(1)、(2)の結果より、ヒト肝障害リスクが同程度であると推測されました。
さらに、東和薬品では様々な製剤でT-LEX法により、ヒト肝障害リスクを評価しています。

T-LEX®法による検討を行っている製品一覧

薬効分類名 製品名
抗精神病薬・双極性障害治療薬
選択的セロトニン再取り込み阻害剤 セルトラリン錠25mg「トーワ」
脳保護剤(フリーラジカルスカベンジャー) エダラボン点滴静注30mgバッグ「トーワ」
持続性Ca 拮抗剤 アゼルニジピン錠16mg「トーワ」
選択的AT1受容体ブロッカー/持続性Ca拮抗薬合剤 アムバロ配合錠「トーワ」
持続性アンジオテンシンU受容体拮抗剤
胆汁排泄型持続性AT1受容体ブロッカー
選択的AT1受容体ブロッカー
持続性ARB/利尿薬合剤 ロサルヒド配合錠LD「トーワ」
高血圧症・狭心症治療剤 持続性Ca 拮抗剤 アムロジピンOD 錠5mg「トーワ」
HMG-CoA 還元酵素阻害剤
持続性Ca拮抗薬/HMG-CoA還元酵素阻害剤 アマルエット配合錠4番「トーワ」
経皮吸収型・気管支拡張剤 セキナリンテープ2mg「トーワ」
消化管運動機能改善剤 モサプリドクエン酸塩錠5mg「トーワ」
前立腺肥大症に伴う排尿障害改善剤 ナフトピジルOD錠75mg「トーワ」
抗血小板剤
ビグアナイド系経口血糖降下剤 メトホルミン塩酸塩錠250mgMT「トーワ」
免疫抑制剤 タクロリムス錠1mg「トーワ」
抗リウマチ剤 メトトレキサートカプセル2mg「トーワ」
抗悪性腫瘍剤 イリノテカン塩酸塩点滴静注液100mg「トーワ」
タキソイド系抗悪性腫瘍剤 ドセタキセル点滴静注80mg/4mL「トーワ」
アロマターゼ阻害剤/閉経後乳癌治療剤
抗悪性腫瘍剤(チロシンキナーゼインヒビター) イマチニブ錠100mg「トーワ」
アレルギー性疾患治療剤
15員環マクロライド系抗生物質製剤
深在性真菌症治療剤 ボリコナゾール錠50mg「トーワ」
広範囲経口抗菌製剤 レボフロキサシンOD錠500mg「トーワ」
抗ウイルス化学療法剤
*平成29年6月 発売予定品

本研究は、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科、積水メディカル株式会社、株式会社フェニックス
バイオとの共同研究として、文部科学省科学研究費補助金の助成を受けて実施されました。
■長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 医療科学専攻 展開医療薬学講座
http://www.ph.nagasaki-u.ac.jp/lab/hospital/index-j.html
■積水メディカル株式会社
http://www.sekisuimedical.jp/
■株式会社フェニックスバイオ
http://www.phoenixbio.co.jp/
T-LEX®法は、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 中嶋幹郎教授および東和薬品株式会社の登録商標です(商標登録第5617856号)。

本研究の過去の関連論文・学会発表

  1. 1)立木秀尚:ジェネリック医薬品評価の最新技術 −ジェネリック医薬品の薬剤性肝障害リスク評価法−, PHARM TECH JAPAN, 29, 15, 167-171(2013)
  2. 2)Mikiro Nakashima et al. :Bioequivalency of Two Different Methotrexate Formulations in Hepatic Gene Expression of Chimeric PXB-mouce with Highly Humanized Liver, Society of Toxicology 50th Annual Meeting 2011(2011)
  3. 3)立木秀尚:ヒト肝細胞キメラマウスの肝遺伝子発現を指標としたメトトレキサート製剤肝毒性の同等性評価法, 関西臨床データ解析研究会 関西臨床薬理勉強会(2011)
  4. 4)中嶋幹郎 他:同一有効成分の医薬品適用時における薬剤性肝障害のリスク予測法に関する研究, 日本ジェネリック医薬品学会 第5回学会学術大会(2011)
  5. 5)Mikiro Nakashima et al. :Evaluation of Hepatotoxic Equivalency by Comparing Changes in Hepatic Gene Expression Induced by Two Different Formulations of Atorvastatin in Chimeric PXB-mouse with Highly Humanized Liver., Society of Toxicology 51st Annual Meeting 2012(2012)
  6. 6)中嶋幹郎 他:ヒト肝細胞キメラマウスを用いたアトルバスタチン錠の薬剤性肝障害リスク予測法に関する研究, 日本ジェネリック医薬品学会 第6回学術大会(2012)
  7. 7)榎本初音 他:ヒト肝細胞キメラマウスとトキシコゲノミクスの手法を用いたアトルバスタチン錠「トーワ」のヒト肝障害リスクの予測〜リピトール®錠との比較〜, 第33回日本臨床薬理学会 学術総会(2012)
  8. 8)中嶋幹郎 他:新規薬剤性ヒト肝障害リスク予測法(T-LEX法)によるモサプリドクエン酸塩錠の先発医薬品・ジェネリック医薬品の比較研究, 日本薬学会 第133年会(2013)
  9. 9)立木秀尚 他:新規な薬剤性ヒト肝障害リスク予測法(T-LEX法)による医薬品添加剤のヒト肝障害リスクへの影響予測, 日本薬剤学会 第28年会(2013)
  10. 10)中嶋幹郎 他:新規薬剤性ヒト肝障害リスク予測法(T-LEX法)の開発とアトルバスタチン錠ジェネリック医薬品の品質評価への応用, 日本ジェネリック医薬品学会 第7回学術大会(2013)
  11. 11)中嶋幹郎 他:新規薬剤性ヒト肝障害リスク予測法(T-LEX法)の開発1〜ジェネリック医薬品による有用性の検討〜, 第23回 日本医療薬学会年会(2013)
  12. 12)榎本初音 他:新規薬剤性ヒト肝障害リスク予測法(T-LEX法)の開発2〜ジェネリック医薬品の品質評価への応用〜, 第23回 日本医療薬学会年会(2013)
  13. 13)Mikiro Nakashima et al. :Changes in Hepatic Gene Expression Induced by Various Statin Formulations in Chimeric PXB-Mouse with Highly Humanized Liver, 49th Congress of the European Societies of Toxicology(2013)
  14. 14)榎本初音 他:新規薬剤性ヒト肝障害リスク予測法(T-LEX法)と臨床での肝障害発現頻度の比較研究, 第34回 日本臨床薬理学会学術総会 (2013)
  15. 15)中嶋幹郎 他:T-LEX法を用いたジェネリック医薬品の肝障害リスク予測研究, 日本薬学会 第134年会(2014)
  16. 16)中嶋幹郎:ジェネリック医薬品の薬剤性肝障害リスク評価, 日本病院薬剤師会東北ブロック 第4回学術大会(2014)
  17. 17)中嶋幹郎:T-LEX法による薬剤性ヒト肝障害リスク予測データと臨床での薬剤性肝障害発生頻度データとの比較解析, 日本ジェネリック医薬品学会 第8回学術大会(2014)
  18. 18)Mikiro Nakashima et al. :Effects of Irinotecan on Hepatic Gene Expression in Chimeric PXB-Mouse with Highly Humanized Liver, 50th Congress of the European Societies of Toxicology(2014)
  19. 19)中嶋幹郎 他:ヒト肝細胞キメラマウスを用いたバラシクロビル製剤のヒト肝臓遺伝子発現への影響解析, 第24回 日本医療薬学会年会(2014)
  20. 20)榎本初音 他:ジェネリック医薬品投与時のヒト肝臓での薬理作用評価へのT-LEX法の適用, 第24回 日本医療薬学会年会(2014)
  21. 21)Hatsune Enomoto et al. :Risk Assessment of Liver Injury Caused by Various Statin Formulations Using Chimeric mice with Highly Humanized Liver, The international Pharmaceutical Federation BA/BE 2014 in Seoul(2014)
  22. 22)中嶋幹郎 他:T-LEX法を用いたジェネリック医薬品のヒト肝障害リスク予測に関する研究, 第47回 日本薬剤師会学術大会(2014)
  23. 23)榎本初音 他:ヒト肝細胞キメラマウスを用いたプロドラッグのヒト肝臓薬理作用関連遺伝子発現への影響解析,第35回 日本臨床薬理学会学術総会(2014)
  24. 24)中嶋幹郎 他:T-LEX法を用いたテープ剤の肝障害リスクに関する製剤同等性予測試験,日本薬学会 第135年会(2015)
  25. 25)榎本初音 他:ヒト肝細胞キメラマウスを用いた薬剤性肝障害応答遺伝子の抽出,日本薬剤学会 第30年会(2015)
  26. 26)中嶋幹郎 他:薬学教育における「ジェネリック医薬品の安全性・副作用情報ビデオ」の効果の検証,日本ジェネリック医薬品学会 第9回学術大会(2015)
  27. 27)榎本初音:「T-LEX®法」を用いたジェネリック医薬品の薬剤性ヒト肝障害リスク評価 ,第1回 日本医薬品安全性学会学術大会(2015)
  28. 28)Hatsune Enomoto et al. :Identification of Possible Biomarker Genes for Drug-induced Liver Injury using Chimeric PXB-Mouse® with Highly Humanized Liver,51st Congress of the European Societies of Toxicology(2015)
  29. 29)西村奈緒恵 他:T-LEX®法を用いた抗がん剤のヒト肝障害リスク予測に関する研究,第25回 日本医療薬学会年会(2015)
  30. 30)中嶋幹郎 他:薬学教育における「ジェネリック医薬品の安全性評価法ビデオ」鑑賞とその効果,第25回 日本医療薬学会年会(2015)
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